製品と取扱説明書の役割り - 私たちユーザーが求めているのは

取扱説明書って、そもそも何のためにあるんだっけ?

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自動車、モーターサイクル、農耕器具やオーディオ、ソフトウェア、さらには産業用制御装置や制御システムなど、メーカーがそれぞれの製品を使う人たち - ユーザー - に快適に製品を使ってもらうための情報を伝えようとすると、パンフレットやカタログ、取扱説明書(マニュアル)などの資料が必要になる、長いことそう思いながら、私は産業翻訳の世界で暮らしてきました。

そうした経緯があったから余計なのかも知れませんが、特に取扱説明書は迷いなく製品を使えるように、分からないことがあっても解決できるように、使いやすく充実していなくてはいけない、取扱説明書は製品の一部なのだからと作る方も、使う方も信じていた時代があった - そんなことを記事(「iPhoneに印刷物になった取扱説明書がないのはなぜか」そして「iPhoneに取扱説明書がない理由はほかにもある?」)にして、私たちは製品に何を求めているだろう情報の意味はどんなふうに変わってきているだろうと考えることが多くなりました。

simple is best
(c) Can Stock Photo

何より、取扱説明書を扱う現場にいて感じるのは、取扱説明書を製品の一部と位置付けて、その制作・発行に力を入れてきた業界ほど、”取扱説明書ばなれ” をしはじめているのではないだろうかということです。

言い方を変えれば、取扱説明書なしで迷いなく快適につかえるものが良い製品なのだというような雰囲気が、特に買う側にあるような気がしています。メーカーが用意しようとしている取扱説明書の内容が全体的に簡素化されてきている、それが買う側の求めなのだろうと感じるのです。

もちろん、自動車に搭載される取扱説明書などは、内容をとてもしっかり読んでいるドライバーがいるということも知っています。ある程度の時間をかけて用意した取扱説明書があるのに、何か分からないことがあればお問い合わせくださいと電話やインターネットでユーザーの疑問に応えるお客様窓口があるのは、どのメーカーでもあたりまえになっていますね。

iPhoneのような製品、iPhoneのようなサービスがすべてと思っているわけではありませんが、取扱説明書自体も読まなくては分からない取扱説明書ではだめだと言わんばかりに内容の整理と簡素化が進んでいるのは確かだろうと思うのです。

たとえば、オーディオ製品の取扱説明書はどうでしょう?
電源ボタンがどれで、CDトレーを開けるボタンがどれで・・・その逆に、電源を入れるためにどのボタンをどんなふうに押して、CDトレーを開けるにはどのボタンをどんなふうに押して・・・と、そういう絵や説明のある取扱説明書、減っていると思いませんか?

以前は1冊、2冊と数えていたその取扱説明書は、1枚、2枚と数えるほどにボリュームが減っていると思いませんか?

簡素化され、情報の量が縮小されているとしたら、そこに表現されている情報はどんなものでしょう? どんな情報を伝えようとしているでしょう?

たとえば私は、ドリップ コーヒーを入れるのにステンレス製のポットを使っていますが、その「取扱説明書」と印刷された1枚もの(10cm×20cmの裏表)の印刷物には、

  • そのポットは「ご家庭での調理用です」と1行書いてあり、
  • 使用できる熱源が数種類あげられ
  • 「お使いいただく前に」(3項目)
  • 「取扱い上の注意」(18項目)
  • 「IH調理器でご使用される場合」(5項目)
  • 「お手入れについて」(6項目)

あとはお客様サービス係りの電話番号が示されています。

オーディオ機器でヘッドホンを使いたいとき、どこにイヤホンジャックをさすのかは説明がいらない要素になってきているのと同じように、ポットの説明書に書かれているのは注意事項、つまりやってはいけませんよという項目の列挙。ポットをどう使うのかは説明の必要がない要素になっています。

「ご家庭での調理」の一言で、どう使うことを想定した製品なのかの説明は完結しています。たとえば、
蓋を開け、温める液体を入れて蓋をして、中身をあたためたければガスコンロやIHヒーターにかけて火をつけるか電源を入れる。そうやって何かを温めることを想定しているのだろうなという説明です。

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入れるものは液体だと説明されているわけではありません。水道水なのかミルクなのか、コーヒーなのか、はたまたゆで卵にする卵をいれた水なのかは「ご家庭での調理」の一言で説明されているわけです。
かつての取扱説明書は、この一言に解釈のずれがないように、具体的な例をあげた説明がついていたのです。

説明ありきの製品ではユーザーは面倒がって使わなくなるでしょう。説明なしでは不親切な製品としてユーザーの評価は下がるでしょう。

そう考えれば、メーカーの苦悩が想像できますね。

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