材料作りは「測る」そして「墨付け」から
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メジャー(コンベックス)&さしがね
ここにこんな棚があったらイメージどおりの収納ができそうだけど••• そうやって、どんなサイズの棚が置けるのだろうかとそのスペースのサイズを測ってみる。
私たちの頭の中には、色々なもののサイズが記憶されていますから、そのスペースのサイズが分かれば、例えばコンパクトな箱に収められた粉末タイプの洗濯洗 剤なら何個くらい、例えば文庫本なら何冊くらい••• そんなイメージがふくらみます。測る作業はアイデアを練ったり、確認したり、DIYの楽しみがはじまる作業でもあります。
- デザイン、イメージを確認するためにメジャー
- 材料の加工のためにさしがね
そんな位置づけで、部屋の中のDIYのための「測る」を考えてみたいと思います。
Info: メジャーか、コンベックスか
一般にメジャーと言って済ませているかも知れませんが、木工などのDIYで使う金属製の巻尺は Steel Tape、Tape Rule または Convex。最近はこの「コンベックス」を製品名としているものが増えているように思います。Convex は「凸面、凸形状の」という意味です。メジャーの金属製のテープ部分が反っている形からきた呼び名ですね。ビニール製で柔らかく、洋裁などで着丈、袖丈、 襟ぐりなど、身体の線にそってサイズを測るときに使う巻尺は Tape Measure とか Measuring Tape と呼ばれるもの。ですから最近では、木工ではコンベックス、和裁・洋裁ではメジャーが主流かも知れません。
ここでは、コンベックス=メジャーとして、メジャーで統一してみます。
メジャーの基本
メジャーを選ぶ - 長さ
そ もそも、部屋の模様替えやいつも使い慣れた空間に新しい家具や棚がほしいと思ったとき、あるいは、季節に合わせてカーテンやブラインドを新調したいと考え たとき、測るという作業は大きなものから始まると思いませんか?その大きさはどれくらいでしょう?どれくらいの長さが測れるメジャーが必要かを知りたいと 思ったら、ふだん生活している家 - アパートやマンションも含めた - の部屋のサイズを思い出してください。
ごく大雑把にですが、一間 (いっけん) 180cm が基本です。カーテンの幅なら窓ガラス 2 枚分が一間。押入れは襖 2 枚分が一間。廊下の幅やトイレなど一般的なドアの幅は半分の半間 90cm。六畳間は文字通り畳6枚分。畳の枚数で言いうと縦1.5枚×長さ2枚という広さ。畳1枚は、これもごく一般的にはという話しですが、 180x90cm。ですから、長い方の壁の長さを測ろうと思えば 3m 以上のメジャーが必要です。逆に言えば、六畳間の部屋に置かれている家具や窓枠のサイズを確認するなら 3m のメジャーで十分ではないかと思います。
六畳間に限らず、部屋の長い辺に沿ってとか、部屋と部屋を結ぶ廊下の長さなどというようなものが対象なら 5m かそれ以上のメジャーということになりますが、それだけの測定を必要とするとなると DIY と言ってもかなりの応用編。かなりの技術を必要とするレベルではないでしょうか。
メジャーを選ぶ - 幅
メ ジャーには幅の違いがあることをご存知でしたか?
幅が広いものほど厚さもあって、テープ自体がしっかりと直線状態を保てる構造です。つまり、立った位置か ら天井までの高さを測りたいというようなケースで、踏み台もサポートしてくれる人がなくてもメジャーを延ばしていけばよいのです。幅が狭いものは厚さが薄 く、そんなケースでは目盛りテープが途中で曲がってしまってうまく測れないということがおきます。
それは逆に、曲線的な、何かの形状に合わせて長さを測り たいような場合には、幅の狭い薄いメジャーの方が使いやすいということです。たとえば、L型のエルボーを含めた水道管の長さを測るようなケースです。
私の個人的な経験では、180x90cm、180x30cm といった合板や板材を水平に置き、長い辺に沿って長さを測ろうとしたとき、曲がりやすい幅の狭い薄いメジャー(19mmでした)は測る位置を移動させるこ とがなかなかむずかしかったということがありました。
木工の、直線を測ることを前提にしているとすれば、両手を広げて測れる程度の長さ(50cm から 70, 80cm くらいまででしょうか)であれば幅の狭い薄いメジャーでOK。1m(100cm), 1.5m(150cm)以上を測ることを考えるなら、より幅の広い厚めのメジャーが使いやすいように思います。私なら、ひとつ選ぶとしたら、長さ 3m 幅 22mm くらいでしょうか。
メジャーを選ぶ - 材質
今売られているメジャーの材質は、SK85 と示される炭素工具鋼(carbon tool steel)、その他 SUS301(オーステナイト系)や SUS420J2(マルテンサイト系)などと示されるステンレススチール製がほとんどだろうと思います(これらの記 号は材質の化学成分を示すために JIS で決められたものです)。つまり、錆や変形に強い材質でできているので、使った後の手入れも簡単と言えるでしょうか。
ロック機構、巻き取り減速ボタン
目盛りテープは金属製で手を放せば自然に巻き取られる構造になっています。この巻き取り構造を意識して使いましょう。特に長く引き出して使っているとき、 使ったあとは注意が必要です。引き出している距離が長いほど巻き取りの速度が速く、目盛りテープがあばれるような場合もあります。テープを引き出し、測定の最中はロックボタンを使って巻き取りが起こらないようにして使い、押さえている手を放すときには、減速ボタンを使って巻き取り速度を抑えるようにすると 安全に使えるように思います。
Info: 怪我なく作業できるよう、ロックボタンと巻き取り減速ボタンを上手に使いましょう。
メジャーを使う
ご く当然のことですが、測ろうとする物・場所に平行にメジャーをあてること、それが鉄則です。そして、特にメジャー初心者のうちは、両手をいっぱいに広げた 長さ以上の長さをひとりで正確に測ることはかなりむずかしく、補助をしてくれる人を求めた方がよさそうだと覚えておいてください。
あてて測る、ひっかけて測る - メジャーの構造
メジャーはつめをひっかけるか、押し付けるかして長さを測る道具ですが、そのつめは固定されずカクカクと動くようになっています。つめが固定されていると、同じものを測定しても、つめをひっかけた場合の方が押し付けて測る場合より、つめの厚さの分長さが短くなってしまいます。その誤差をなくすため、つめがスライドするように作られているのです。
Info: つめは固定されておらず、小さくカクカクと動く構造になっています。
また、そのつめには切り込み型の穴があけられています。材料や測ろうとする場所の途中からの長さを測りたいとき、その場所に釘を打つことができれば、つめに開いた穴が役に立 ちます。つめをひっかけた釘の側面(写真の墨線の位置)が長さを測る起点になるのです。
Info: つめに開いた穴にも使い方があります。
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さしがねの基本
ステンレス製のものが多いかと思いますが、曲尺 とか 指矩、指金 という文字をあて、かねじゃく とか まがりがね、あるいは さしがね と呼ばれる、金属製の直角に曲がったものさしです。大工道具の代表選手のひとつですが、さしがねもその例にもれず、それぞれの部位の呼び名が古風です。長 い方を「長手(ながて)」、短い方を「つまて(短手 または 妻手)」などと呼びます。呼び名はそのほかにもいくつかありますが、それも大工道具らしいところかも知れません。また、直角に曲がった部分を呼ぶ「矩の 手」などという名称もありますが、今は参考情報までとしておきましょう。
さ しがねは基本的に表と裏の両面に目盛が刻まれています。短い方の短手を上にして長い方の長手を持ち、短手を右に向けた状態で見えている面が表です。と言う よりも、私たちに使える目盛がふられている面が表と言うことになってしまうかも知れませんね。さしがねは寸法の測定や直角を計る、あるいは計算尺として 使ったり、屋根などの勾配を出すなど、大工作業に欠かせない測定と墨付けのエキスパート工具。一本あれば家が建つ(?) と言われるほどの道具で、その使い方だけで専門書が一冊できるほどです。
そうした、さしがね本来の機能や使い方に触れてみたいと思ったりしますが、屋根つきのものなど、なかなか大がかりな作品になりそうですし、そうした機会に出会うことはまれでしょうか。愛犬のために犬小屋を作ろうと思い立ったときに役に立つかも知れませんね。
通常の私たちにとっては、より長い寸法を測るのに使うメジャー(巻尺)が cm 表記で作られていますし、何より普段の生活で長さを測る基本が cm ですから cm の目盛が付けられたものを持つようにお勧めします。
長さを測る、墨付けする
さしがねの長手を持って、材料の端と短手を合わせて寸法取りをします。 |
必要な寸法位置を確認したら鉛筆の先をその位置に置いたままさしがねを一旦はずし、 |
長手を材料にひっかけるようにして、短手を寸法位置に合わせれば、長手をひっかけた面を基準として目的の位置に、垂直な線を引くことができます。 |
ヒント:さしがねの弾力を利用する使い方ですから、短手の端がわずかに浮き上がります。線を引く(えんぴつ)の角度を保つことが大切です。
そして、この方法を使えば、材料を目的の位置で切り離す場合に材料の四面につけること(これを「墨回し」と呼びますが) も簡単です。
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- 測る道具 - 45°角を測る専用定規を使う
- 木工のアイデア - 額縁に必要なのは測る&切る・削るの総合力
- 測る道具 - けびきで墨付けの腕前をあげる
長さを等分する
木材の中心を求めるなど、材料の幅を等分にするための墨付けもさしがねがあればずいぶん簡単に進めることができます。
- 材料の幅を測り
- 測った長さをもとに割り算を行い
- 求めた長さの位置に墨付けする
等分する作業は当然そんな手順になりますが、単純に割り切れない当分の時には困りますね。
たとえば 5cm 幅を 3 等分する墨付けをしたいというようなです。そんなときに
- (3 等分するなら)3 の倍数の長さを想定し(たとえば 6cm, 9cm)
- 等分する面に、想定した長さになるよう、さしがねを斜めにあてて
- 1/3 の位置に墨付けすればよいのです
たとえば 6 cm を想定したなら 2cm, 4cm の位置です。 - 2 ヶ所に位置づけしたら、つけた印を結んで線を引いて、3 等分の墨付けの完成です。
長さによっては小数点以下のミリ単位の作業をしなくてはならなくなりますが、この方法なら安心して作業できます。木材の中心(1/2 の位置)を求めるような場合にも使えるテクニックだと思いますので、覚えておいてください。
角度を出す
さしがねで角度を出すというのはさしがねの使い方というより、学校で習った三角形の内角の和の定理の復習ですね^^;
- 角度45°
さしがねの角度が90°であることを利用してさしがねの曲がりを上に、木材の1辺に対して長手&妻手それぞれに同じ長さ(左図の 長さ”A”)を取ってやれば木材とさしがねが交わる位置の角度が45°になります。
- 角度30°、60°
これもまた45°のときと同じように、さしがねの角度が90°であることを利用してさしがねの曲がりを上に、木材の1辺に対して長手&妻手いずれか一方の長さが半分になるように取ってやれば木材とさしがねが交わる位置の長く取った方の角度が30°、短く取った方の角度が60°になります。