実家を維持できるか・手放すかの分かれ道となったもの
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これまで、私が実家相続やその維持のためにどのような項目をどのような手順で対処してきたか、項目ごとにまとめていますが、空き家法(空家等対策の推進に関する特別措置法案)が施行されたタイミングも私の決断を決定づけたものだったかも知れません。
私が実家の最終的な処分というものを、漠然とではあっても、意識したのは母親の存命中 - 存命中ではあってもがんの最初の手術が終わり、回復への足掛かりがもてるかどうかという頃 - 闘病が本格化する矢先の頃でした。
実家母屋の老朽化はどんなふうに進むか
家というものは、子どもが独り立ちして離れてゆき、住む人の人数が減れば
- 戸の開け閉めの頻度が減り、空気の動き・入れ替えの頻度が低くなり
- アルミサッシのパッキンなども、弾力がなくなりひび割れたり、貼りついたりということが起こることもあれば
- 水道を開く回数が減り、使う水量が減り、かかる水圧が低くなり
- 下水用の浄化槽は水の停滞時間が長くなり、汚れを浄化するための微生物も減り
- 風呂のタイルも目地も、流れるお湯や水の量が減れば乾燥する時間がながくなり、ひび割れが起こりやすくなる
- 水の流れる量が減った配管には、それまでの水量ならば十分に排出できていた汚れやごみが残るようになり、腐敗臭の原因にもなる
そうした変化で、内側(部屋の内部)から、目に見えて老朽化が進みます。
- ガスの配管や、コンロとのつなぎに使われているゴムホールの劣化はもっと深刻な危険に直結するおそれもあります
防犯や防災、衛生上の問題
ガスや下水道の配管の劣化と言ってもなかなかピンとこないかも知れませんが、築年数が経っている家ほどそうした劣化が強く進むというのは、間違いのないところです。そして、
- 庭の手入れをおこたれば、雑草や庭木の繁茂が進み、風通しが悪くなって庭木の病害虫が発生する原因にもなれば、
場合によっては、それまで届かなかったところに枝を伝わって雨水が行くようになり、家の外周りに予想外の錆、水漏れを引き起こすこともあります - 庭木の繁茂は視線を阻害する障害物になることもあり、防犯上、死角を作ることにもなります
- 庭木や雑草の手入れがされていないだけで、隣家に対して説明のできない迷惑をおよぼすおそれがとても高くなります
防犯という意味では、人感センサーライトを玄関や駐車場周りに取り付けるという選択肢もあるでしょう。漏電のおそれのない、配線がなくても長時間連続で使える乾電池駆動のものも売られていますから。部屋の中にも暗さに合わせて夜間点灯するタイプの常夜灯も売られていますから、わずかながらも役に立つかも知れません。
ただ、(防犯とはレベルが違いますが)猫やそのほかの動物、鳥が入り込むという例もあったことは付け加えておかなくてはいけないでしょう。床下に動物が踏み込めないように敷き詰める特殊な突起のついた敷物も売られています。
空き家法が施行されるようになったのも、そうした不動産の放置によって隣家の住民がこうむる迷惑や危険を少しでもなくすためのものだというのは、十分に理解できます。
母親の闘病やそれと並行して介護やそのための手続きなどを進めなければならず、無人となった実家と病院の間を往復しては発生した不具合に対応をしていた私にとって、空き家法という言葉が聞こえる前から、そうした問題・不都合がのっぴきならないものだったのです。
経済的な負担
経済的な負担は別の記事で紹介したように、
- 実家母屋につながっているライフラインの維持費
- 交通費と
- 問題・不都合に対応するための道具や材料の調達費
が主だったものでしょう。
ライフライン(電気・ガス・水道)+週末ごと・4回/月の往復で25,000~30,000円前後だったでしょう。それに月1度程度の頻度で修理や補修を行うのに平均約5,000円程度だったでしょうか。
- 庭木の剪定用の道具、雑草駆除の道具や除草剤、廃棄用の袋・シャツやズボン、靴や帽子も用意したことがありました
- プラスチック製の配管のひび割れ部分を交換するための道具や材料を購入したこともあります
私のように自分で作業しないまでも、実家周辺でそうした作業を依頼できる業者がどこにいるか調べておけば、手配・依頼するということもできるでしょう。

空き家法(空家等対策の推進に関する特別措置法案)
- 基礎や屋根、外壁などに不具合があって、倒壊などのおそれがある
- 管理が適切に行われず、著しく景観を損なっている
- ごみが放置されているなど衛生上有害である
- そのほか、放置したままでは近隣の生活環境が維持できないと判断される
そうした条件に該当する不動産が「特定空き家」に認定された場合、
- 固定資産税が最大6倍に、また
- 持ち主に対して修繕や撤去の指導・勧告・命令は察せられることがあり
- 命令に従わない場合には、行政は強制的な撤去を行い、その費用を持ち主に請求できる「代執行」も可能となる
というのが、空き家法です。
上の4つのいずれかひとつでも該当するとなれば、売却やレンタルなど不可能になることは言うまでもありません。私の実家の場合、その日常レベルの管理が評価されて売却が可能になったわけで、レンタルを検討するとなれば、母屋だけでも100~150万円をくだらない手直しが避けられないという評価と見積もりでした。
その内容は、「人に貸して住んでもらうためのリフォーム」代といえばいいでしょう。借りる側の立場になれば十分肯ける内容だったのです。
レンタルのための見積もりは、角度を変えて考えると
私自身が実家に住むという選択をした場合もそれに近い費用がかかるということを意味していました。少なくとも20年、30年というレベルで住むことになるからです。
- 自分で住むか
- レンタルに出すか
- 売却するか
- (そのために)更地にもどすか
- 土地・建物として扱うか
専門業者に見積もり依頼する場合も、それが最も中心的な条件になるだろうということです。そして、それぞれの条件はごく自然に回答が出るでしょう。
- 子どもが卒業するまでは移住がしにくいとか
- 修繕の費用を確保できるか
- 借主、買手が見つかる見込みがどれほどあるか
など、それぞれの回答が出やすいだけに、どの選択肢を選ぶかもごく自然に決まるだろうと思うのです。
私の条件は:
- 将来、自分がいなくなるときには自分の兄妹・家族にまで及ぶ相続の問題を自分のところでなくす。
- そのために、母屋・庭はすべて(そのときの)現状まま(修繕はしない)、業者の見積もりどおりの価格かそれ以下で買手を探す。
- 自分の資産ではない以上、より高く、という価格設定・交渉はしない。
- 売買契約履行のために必要な測量の費用などすべてを含め、売却益がマイナスにならなければ良しとする(マイナスとなってもやむを得ない)。
というものでした。その結果、売却の広告を出してから1ヶ月以内に相談が集中し、3ヶ月でほぼ決着。6ヶ月目に、両親が購入した時のおよそ3割の金額という売却益を残して売却契約履行完了となったのです。