デジタルとアナログ-ぼくらは今どのあたりにいるだろう??

翻訳という情報の世界から見ていた、デジタルからアナログへの転換

アムステルダムやミュンヘンなどなど、ヨーロッパにあるサーバーと東京のオフィスにあるPCをオンラインで結び、いくつものデータを連動させて進める仕事。

そういう仕事は私が関わっている翻訳の分野だけではないだろうと思います。
クラウドという技術の使い方、そのバリエーションが増えるのといっしょに、時間と地理的な問題を越えながら、仕事のやり方も変わっていく - そんな時代にさしかかっていると感じます。

ただそんな中でも、デジタル化が遅れている、あるいはこれからデジタル化をはじめようとする分野には、とんでもなく膨大な量の手作業があったりするのです。

その様子は30年ちかく前、はじめてSGMLに出会ったころによく似ています。
それまで紙(ページ)のイメージで管理していた情報を

  • ファイルという名のデジタルに置き換え、
  • マークアップ - 当時はタグと呼ばれることが多かったのですが - を付けて管理する情報に形を変えようとした

それが、SGMLという名の情報のデジタル化でした。

膨大な時間とお金をかけた、アナログからデジタルへの切り替えがコンピュータやパソコン、あるいは自動車産業などを中心に進められたのです。紙の情報をファイルに - そのデジタル化を一度経験し、高速の検索結果を得られるようになり、ページのイメージを何度でも高速に繰り返し得られるようになれば、元に戻るということは選択肢からなくなります。

高速化と簡素化は背中合わせ

紙とペンを使って行っていたはずの原稿作成が、キーボードとマウスでできるようになっていることが不思議でもあります。

両腕で抱えきれない量の紙を使っていた仕事から紙がなくなる - それは環境保護の観点からはすばらしいことだろうと思うのですが、そうした観察のほかに感じているのは、アナログな私たち自身を助けるためにデジタル化が進んでいるのではないかということです。

そして、そのデジタルの助けを受けている私たちの行動パターン、思考パターンは目に見えて簡素化・単純化しているような気もします。

 

その昔、私の仕事に辞書は欠かせないものでした。

厚さ3cm, 4cmという分厚い手のひらサイズの辞書を手元において、必要になったら何度でもその辞書を開いて調べものをする。ページを繰ることで進んでいたその仕事もマウスだけで行えるようになり、かかっていた時間は1/10あるいは1/20に短縮されています。

簡単便利は悪いことではありませんが、辞書を中心にして働いていた頭脳はどこかへ行ってしまったな!^^; という感が強くなっています。

辞書を読んで、内容を把握し、一番適切な訳語を選ぶ - その一連の精神面の作業が限りなくなくなっているのです。マウスで選択しショートカットキーを押せば候補の訳語が表示される - 頭脳作業だった辞書を引くという作業がショートカットキーを押すという身体作業になってしまっています。アナログからデジタルではなくて、アナログからフィジカルへ^^; ですね。

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短時間に訳語にたどり着いた私たちの頭脳は、はたしてその時間をどこでどんなふうに使っているでしょうか?

より短時間に、よりたくさんの言葉の意味を確認できたとしたら、より正確な、より読みやすい文章を書くための推敲に時間をかける - もしそういうことができているとすれば、デジタルのデジタルたる存在意義があるということかも知れません。ですから、アナログからフィジカルのままでは終わりたくないものです。

テクノロジー専門家のなかには、いずれロボットの人工知能がこれらの分野でも人間を凌駕する日が来ると予測する人たちもいる。しかし、それでも人間が比較優位をもつ分野は残る。未来の高所得の職は、そこに存在する。

出典:リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット著 / LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

 

アナログとデジタルの間、自分はどのあたりにいるだろう - そんなことを考えてみるのが意外と面白いものだと思いながら、自分の明日を想像してみましょう。