自動車という製品は近くにあるようで遠い存在かもしれない?
私は、自動車業界を主な相手に産業翻訳という分野の仕事に取り組んできましたが、その仕事を進める上で必要な情報を収集するためのリソースとして定期的に目を通している雑誌に、『日経Automotive』というものがあります。
最近になって、その雑誌を見ていて感じるのは、クルマのバリエーションが増えているということ。
たとえば…
ガソリン | |
ディーゼル | |
HEV | ハイブリッド自動車 |
PHEV | プラグインハイブリッド自動車 |
EV | 電気自動車 |
FCV | 燃料電池車 |
という6種類を並べてみるとその意味が分かりませんか?
- 化石燃料を燃やすタイプ
- 排ガスを出さない電動タイプ、そして
- その両方の機能を合わせたタイプ
おおよそそんなふうに大別することができるように思いますが…
何が違うの? それぞれのタイプは実際に走っているの? と感じていたのは今からほんの数年前。
脱炭素社会というけれど…
どこがどんなふうにちがうの? という感覚の方が今は近いかも知れませんが、概観からは、EVとかPHEVとかの違いは分かりませんよね。
たとえば、大型のマーケットなどでときどき見かける自動車メーカーが実車を並べて行う販売キャンペーンなどがいい例かも知れません。並べられたクルマの仕様を示すプレートが掲げられたりしていることがありますが、そのほとんどがガソリン車。
そのメーカーの HEV とか EV だけの宣伝!? なんていうのは、まだ見たことがありません。
そんな例を考えてみても、ガソリンとディーゼル以外の車種がどれなのか、何なのか… なかなかピンとこないんですね。
今このタイミングでこんなことを言っていたのではダメだろうとは思うのですが、
私たち一般人はメーカーが用意し、政府が?認可してくれるクルマなるもののユーザーでしかない… というような、どこかぬるい(?) 感触が残っているように思うのです。
イギリスやフランスなどの国々が2030年、あるいは2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売を禁止したり、さらにその先、カーボンニュートラルを目指すなどの目標を立てたということが報じられたのは2017年だったことを思うと余計にそんな感じがしてしまいますね。
環境を破壊しながら走る自動車(?) から、環境のためのモビリティになれるだろうか
ガソリンやディーゼル以外を燃料にする自動車のバリエーションが増えているという話しと、この「カーボンニュートラル」の話しというのは、環境問題とか環境対策という言葉を挟んでつながっています。
つながっているのですが、時間的にさかのぼって思い出してみると -
ドイツ語を学びに行ったドイツの街で Ozonschicht(オツォンシヒト: オゾン層)という言葉といっしょにオゾン層の破壊という言葉に出会ったのは30年以上前のことでした。
ドイツの南部を中心に広がる Schwarzwalt(シュバルツバルト: 黒い森)を酸性雨から守らなけばいけないという報道や活動が活発になっていた頃だったのです。
たとえばその頃が、環境問題や環境対策のはじめだったとすると、イギリスとフランスがエンジン搭載の自動車の販売を禁止するという2040年まで、60年70年という時間が経つことになります。
そして冒頭にあげた『日経Automotive』で特集されていた「2040年のクルマ 徹底予測」という記事にあった一覧表の中、「エンジン車」「ガソリン」の行にはこんな記載がありました。
2040年
排熱回収や複合サイクルなどの採用で熱効率60%超へ
(高効率火力発電所と同水準)出典:『日経Automotive』2018年2月号(1月11日発行)・「2040年のクルマ 徹底予測」より
片や、同じ表の「環境規制」「欧州」の行には
2040年
英国、フランスがエンジン車の販売を禁止へ
と記載されています。
私のような読者は、このふたつの記載をなんとなくつなげて読んでしまうのですね。
イギリスやフランスで販売禁止になるという “エンジン車” が、2040年には熱効率が60%になっているという… と。
逆に解釈すると… 2040年、熱効率が60%になったところで “エンジン車” は英仏で販売禁止になる… ということにならないか? と。
さらには… “エンジン車” は、英仏で販売禁止になる2040年、熱効率が60%になるところまで技術を高めながら販売がつづけられるということか?? と。
繰り返しますが、『日経Automotive』2月号の特集にはそんなことは書いてありません。『日経Automotive』の “予測” をどう解釈すればいいだろう? という話しに過ぎません。
ただ、エンジンとか燃料というものに対する理解をもう少し深めておきたいと感じるのです。