AIを通して考える仕事の本当の意味

「自動翻訳」は何年前の話しか?

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私の仕事の分野がどれくらい認知されているかは分かりませんが、私たちの世界の言葉で言うと「産業翻訳」ということになるだろうと思います。文芸翻訳 vs. 産業翻訳 というくらいの意味で使われているように感じるのですが、翻訳とAI というつながりをたどっていくと、40年から30年くらいになるでしょうか、その昔にあった「自動翻訳」の流れにぶつかるはずです。

自動翻訳という言葉が目標になっている時代には、「AI」という言葉も概念も、実際もありませんでした。
それでも、翻訳はコンピューターには格好の仕事になるはずだと研究する人も、一般人の私たちも思っていたように感じます。

開発環境のもとになるPC(コンピューター)の処理能力は今の何分の1だったでしょう?
AIはもちろん、ビッグデータとかDeep Learning(ディープラーニング)とかのアーキテクチャーも、実際の方法もなかった(と思われる)にも関わらずです。

MEMO
以前「自動翻訳」と呼ばれていたものと、今「機械翻訳」と呼ばれるものは、少々違う(あくまで「ある意味で」)と、私は考えていますが

翻訳という仕事はいつまであるか

今やっている仕事がいつまであるだろう? なんていうことはもうだいぶ前から意識するようになっていましたが、さらに現実味を帯びた話しになっているような気がします。その理由には、

  • 私の今の仕事がAIの守備範囲に近いから(AIに取って代わられるおそれを感じているから)
    そして
  • AIが利用される範囲が広がりはじめた影響で、今の仕事の質が変わりはじめていると感じるから

という2つがあります。

この「今の仕事がいつまであるだろう」という疑問 - というより疑心暗鬼といった方がいいような気がしますが - のもとになっているのが、私たちが同業の一角だと思っていた特許翻訳の世界に、機械翻訳が公式に採用されるようになったというニュースがきっかけでしょう。

このたび、NICTの技術移転先の一つである東芝デジタルソリューションズ株式会社を介し、NICTのNMTが特許庁の「次期機械翻訳サービス」の中核として採用されました。本システムは2019年5月に一般公開され、2023年3月まで長期間広く利活用される予定です。

出典:NICT・「特許庁“次期機械翻訳サービス”の中核技術としてNICTの技術が採用

このニュースで使われている NMT (Neural Machine Translation/ニューラル機械翻訳)というものはどういうものだろうということや、「公式に採用されるようになった」とか「長期間広く利活用される」というのが具体的にどういうことなのかなどなど… 確認してみたいと思うことがたくさんあると思うのですが…

私自身、この産業翻訳という仕事には “正確で効率的な翻訳” というものを考えて取り組んできたつもりで、そのために世に出回りはじめたパソコンなるものを覚え、プログラムを勉強して、まがりなりにも当時のレベルで考え得る翻訳・編集システムのひとつを構築したりもしたものでした。

その面から考えると、「今の仕事がいつまであるだろう」という疑問は私にとっては楽しい? とても興味ぶかいものではあります。このことは、いつか・どこかの記事で書いたと思いますが、特許翻訳のような事例を聞かされると、自分の仕事の終活を宣言されているような気もして、少々複雑です。

それにしても、(ある分野で、とは言え)機械翻訳が公式に「使える」と宣言されたような今回のニュースによって、人間が? 行う従来通りの翻訳に対する風当たりはずいぶん変わったり、強くなったりするんだろうなと思います。

逆に、機械翻訳は機械がやるんだから安いんだよね!? というようなイメージも加速するんだろうなとも思います。

つまり、人が請け負う仕事、その出来上がりにお金を払うという、物の価値感に関わる根っこの部分は今はほとんどなくなっていて、製品もサービスもまず「安くてあたりまえ」みたいに捉えられるようになっている分、その「請け負う(=仕事する)」という部分が機械でできるということになれば、仕事ととかその成果というものは「誰かが知識や技術を活かして創り上げたもの」、だからお金を払う、という感覚も完全になくなるのじゃないかなと感じるのです。

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だから、翻訳という機械でもできることは製品でもサービスでもなく、ましてお金を払って買うものでもなくなる… そうやって「仕事ではなくなる」のだろうなという感じがするのです。

そういう意味で「今の仕事がいつまであるだろう」と思っているのです。

to be continued …

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