良いマニュアルは書かずに組み立てる?

文章を書くという文化の変化に、私たちはついていけるか

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最近、言葉を並べて文章にする - 書く - という文化はどうなっていくだろうということをよく考えます。

私は長く、製品マニュアルやカタログを翻訳するという仕事に関わってきたのですが、みなさんご存知のiPhoneのように、パッケージの中に取扱説明書を持たない製品が出てくるようになって、製品の周りで使われる文章というものが大きく変わってきているからです。

とても奇怪に聞こえるかも知れませんが、製品マニュアルを書く技術は、いかに同じ文章を正確•高速に出力できるようにするか、という進化を続けてきたと言えます。

  • 製品の使い方を順序立てて整理し、
  • 使う文章をパターン化をし、
  • 使う言葉を統一する

つまりは、説明する内容と使う文章をパーツした上で、そのパーツを効率的に組み立てる方法 - ツール - を開発する。ちょうど、生産ラインで自動車を組み立てるのに似ています。

想像できるでしょうか。説明文(+説明画像)をパーツ化するということは、あくまでイメージの話しですが、同じ文章を2度は書かないということを意味しています。必要な部分を変更するということはあっても、同じ文章を2度書くことはありません。

情報の正しさと情報を発行するまでの時間を極限まで短縮する - それを目的として考案され、実行され、改良されてきた方法です。その方法といっしょに、良いマニュアルとはの定義も、良い説明文の定義も確立されてきたわけです。

XMLでできること
(c) Can Stock Photo

マニュアル作成のフルデジタル化

文章を書くのではなく、パーツ化して組み立てる - 今はもう普通になっているその方法を、言葉の新しい文化だと私は思っているのですが、その新しい文化は正確な文章を高速に出力するという目標を見事に実現しています。

原稿を作り、文章を書き、文字を打ち、並べ、レイアウトして・・・とやっていた頃、製品の取材からマニュアルの印刷完了まで、1年近い時間をかけていた工程が今では1ヶ月、2ヶ月という程度の時間で終わってしまうようになっています。書くという文化がどこへ行くのかという疑問は、製品そのものが生まれ私たちの手に届くまでの時間をそれほど短くしてき現代文明は、このあと何を作ろうとするのだろうという疑問につながっていくのかも知れません。

パーツ化された文章に話しを戻しましょう。

ブログを書かれる方は、目にしたり触ったりすることがあると思いますが、テキストや画像、リンクなどの情報のレイアウトを決めるHTML。これはブラウザて読めるように、ウェブ上に情報を発信するためのファイル形式ですね。

そのHTMLを進化させたような構造のファイル形式にSGMLとかXMLと呼ばれるものがあります。どれも”ML”の部分が同じですが、HTMLをレイアウト用だとすると、SGMLやXMLは、製品マニュアルの文章や画像など、必要な情報を入れる入れ物として機能します。

ブログを書くとき、タイトルはここへ、記事の本文はここへとカーソルを移動しながら作業しますが、いくつかの棚や引出しを持ったキャビネットのようなものと言えば良いでしょうか。マニュアルとして発行するのですから、マニュアルのページでたとえるなら、ブログの投稿ページと固定ページのように、必要ないくつかのテンプレートを用意したシステムを想像してもらえばいいかも知れません。

テンプレート決めたら中に何を入れれば良いか
(c) Can Stock Photo

2カラムのテンプレート、3カラムのテンプレート、ヘッダーにタイトル、フッターのすぐ前に大きなページ全幅の画像・・・たとえばそんなイメージです。ブログと同じ、カテゴリやタグで識別情報をつけ、必要な文章がどこにあるかの検索も即座にできる。その昔は紙に印刷したり、コピーしたものをファイリングして、インデックスを頼りに検索していた仕事は、そんな風にフルデジタルで運用されているのです。だから、1年かかっていたものが1ヶ月、2ヶ月と短時間でできるわけです。

SGMLやXMLによる文章の書き方の変化は、原文ができあがってから翻訳していた工程をさらに短くしていくのではないかと想像しています。あくまで想像の話しですが、たとえて言うなら同時通訳のタイミングでしょうか。

一つの言葉で話されたことを、1拍置く程度の遅れだけで、もう一つの言葉に置き換える。それほど短時間で翻訳する - 書き言葉として文章を書く - ことはさすがに不可能のように思えますが、今の文字入力の現状をもとに想像してみると、まんざらただの空想ではないような気がしてきます。

同じ文字の入力も

  • キーボード(あるいはディスプレイをタッチして)入力
  • 音声入力もあれば
  • 手書き入力もある、そして
  • カメラで写し取ったものを自動OCRを介して文字化する方法もあります

Google翻訳というアプリが今の実例として一番近いかも知れませんね。そして、入力だけではなく

  • 文字変換ソフト
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の存在も重要だろうと思います。文字はすべてを入力するのではなく、変換ソフトが変換候補として表示してくれるものを選べばよいという要素がからんでいますから、入力の速度はさらに短くなっています。

あえて仕事からスタートしてみたのですが、書くということを考えみただけで、今のデジタル環境が縦横につながっている様子が見えてくるような気がします。良いマニュアルはどうすれば作れるかという話しは今ではデジタル技術と連携して十分に成熟して、今では、デジタルが意外とおもしろいという話しになりそうな予感がしています。

さてここでもう一度、最初の疑問に戻ってみましょう。言葉を並べて文章にする - 書く - という文化はどうなっていくと思いますか?

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