言葉の世界から見てきた情報の高速化

20年はどれほどの時間だったのか

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材料+ツールの変化と仕事の仕方の変化

黒崎政男さんの著書『哲学者クロサキのMS‐DOSは思考の道具だ』は、

カント哲学研究を本業とし、また、人工知能批判などにも関わっている私が、完全に素人ユーザーの立場になって、今日のパソコンについて記事を書く、ということは、実はかなり勇気のいることであった。

と言いながら表したMS-DOSの解説書 - 今ではMS-DOSにまつわる回顧録と言えるでしょうか? - です。

産業翻訳の世界に身を置いて、メーカーがユーザーとの間にどんなコミュニケーションを取ろうとしてきたかを見てきたと思っている私ですが、MS-DOSあるいはWindowsの昔を振り返ると、今の情報がどれくらい高速化しているか、今の情報には何が求められているものが分かるように思っています。

みなさんは、その昔、どんなふうに仕事をしていたか覚えておられますか?

原稿をパソコンで入稿する

パソコン通信はたいへん便利なメディアで、しっくりこないなどといったらバチがあたるのではないか、と思われるほど、私はその恩恵に浴しております。
それは、まず、原稿をパソコン通信で圧縮して送ることができるようになった点です。

(中略)

じゃあ、どうやっていたかというと、筆者がたとえワープロを使用していても、それをプリントアウトして編集者に送るわけです。その原稿から活字が組まれたり、(電算写植の場合は)コンピュータに入力されたりする。その出力が初稿ゲラとして出力され、校正者の目を、(最低一度は)通ります。それが著者校正用のゲラとして筆者に送られ、活字職人や入力者のミスや校正者の朱字(および、筆者本人のミス)を校正・確認して、再び編集者に郵送で返す・・・・、という過程を経ていたのでした。

自動車の取扱説明書や修理マニュアル - 産業系の出版物 - を編集し、印刷・製本してクライアントの自動車メーカーに届けるという会社で仕事をしていた私の環境も、この話しとほとんど変わることがありませんでした。

黒崎政男さんのこの著書の初版発行が1993年と記されていますから、MS-DOS6.0、そしてWindows3.1の時代です。私の場合、外付けのモデムをPCと並べて置き、インターネットやeメールというものに触り始めたのがこのころでした。

原稿作成タイピング文字校正編集編集校正原稿作成者による校正
そして 下版印刷製本

という流れが私の仕事では標準的なものだったのですが、

原稿作成は手書きからキーボード入力になり、MS-DOSの進化、Windowsへの移管、PC環境の進化に合わせて、タイピスト+文字校正者の仕事がなくなっていきました。

原稿作成 → タイピング → 文字校正編集編集校正原稿作成者による校正
そして 下版印刷製本

これは20年前後の昔の話しですから、この当時の工程がさらに少なく、短くなっていることは言うまでもありません。手書きで原稿を作り、その原稿の内容をタイプしていたころ - 私が今の仕事についたばかりの頃には、ときには1冊半年以上の時間がかかっていた作業が、PCを利用した工程によって3か月、1か月と短くなったのです。

OS+PCの進化が変えたもの

keep up with speed of information
(c) Can Stock Photo

私は自分の仕事を通して情報の高速化を感じ続けているのですが、こうして材料の変化が工程を変化させる形で進んできた高速化が第1段階、そして発行物を変化させる形で進んでいる今の高速化は第2段階に入っていると思っています。デバイスとの連携ということを考えるとすでに第3段階と言っていいのかも知れません。

この第1段階、第2段階の間には高速化をブーストさせる作業方法の標準化やチューニングも同時に行われていました。つまり、原稿作成から印刷・製本の一連の手順にたくさんのバリエーションが考案され、統廃合を繰り返しながら今日に至っているのです。

発行物の変化は説明の必要はないくらい日常的なものになっていますね。紙を使った印刷物としての資料ではなくて、インターネットや自動車で言えばオンボード・マニュアル、つまりセンターディスプレイに映し出すデジタルの説明書です。

その制作にかかる手順は

原稿作成 → タイピング → 文字校正編集編集校正原稿作成者による校正
そして 発行用データの作成印刷発行

項目の数だけでカウントするのであればかつての半分ですから、どれほど高速化されているかが分かるだろうと思います。

発行形態の違い - かつては紙の版下、今はXMLデータ - が今のように日常的に、私たちのすぐ身近なものになるには何といってもMS-DOSからWindowsへの(あるいはOSx)進化、それと歩調を合わせるようにして進化してきたPCやCPUがあったからこそだろうと思います。

繰り返しになりますが、私がこの世界の仕事を始めたばかりのころ、私が担当する翻訳の作業は原稿作成(編集のための指示作業を含んでいました)が終わってから印刷物としてマニュアルが完成するまで数か月という単位の時間がかかっていました。

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今、私が関わっている翻訳は、一番短いもので翻訳のための原文テキストを受け取ってから平均しても24時間以内に発行が終わります。印刷物として手に触れることができる、手に届けることが目的だった情報は、必要な時必要な内容を確認できることを目標として - これが On Demand ですね - 発行されるようになっているのです。

たとえば作業時間の違いが6か月 対 24時間だとすれば、単純な概算でその差は180 : 1。今の仕事がいかに高速化されているかが分かります。

MS-DOSってどんなものだったか。Windowsってどんなものだったか。それを思い出しながら、今の仕事やものを考えるのにかける時間がどれくらい早くなっているか、確認してみませんか?

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