終活 - 親の気持ち、子の気持ちをひとつにする場所

親と子 - ほんとうの思いを伝え・受け止めるために

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「子どもには迷惑をかけないように」 - それは私の両親、というよりは母の口からよく聞かされた言葉だったように思い出されます。

ただ、母を見送って足掛け7年が経つ今になってみると、その言葉は母にとって「子どもの迷惑になってはいけない」ということだったのだろうなと思うようになりました。

迷惑” というのは、”心配させる” と置き換えてもいいし “世話になる” と置き換えてもいい - つまりは、母にとっては、私たち子どもに何かを頼む、やってもらうということ自体が迷惑をかけるということだったのではないかと感じるのです。

ところが、がんの宣告を受け検査や手術をはじめとする闘病がはじまってみると、病院への申請や連絡のための家族側の代表として私が書類に名前を書くようになる - 入院や手術の申請書、確認書には患者本人として母は自分の名前を書けばいいのですが、なぜか子どもの私が保護者の欄に名前を書くようになったのです。せめて、付き添い人という書き方になっていればと思いながら私はいくつもの書類の保護者の欄に名前を書いたものでした。

母の体を心配する兄妹たちの思いもあって、せめて病院での検査くらいは受けてもらいたいと話しをしたこともあり、また何より、がんの宣告を受けた直後の母が私に向かって「こんな病気になってごめんね」と言った言葉が引っかかって、私に対してさせてはいけない手間をかけさせるという思いを持たせてしまっているのだろうなということが気がかりでした。

正面から病気と向き合おうと思っても自分一人ではできない、それは母にとってそのまま「子どもに頼まなければならない」、「子どもに迷惑をかけてしまう」という負い目になっていたのではないかと思うのです。

relationship between parents and child
(c) Can Stock Photo / Rohappy

病院での治療をこれ以上進めることはできないという宣告を聞かされ(これは私だけが聞いたことですが)、母をホスピスへ移すことを決めたのですが、母も帰れないところへ行くことになると感じていたのではないかと思います。1か月数十万の費用がかかるということも分かっていたでしょうから、自分ではどうにもできないそうした苦労を子どもにさせるわけにはいかないという思いもあったでしょう。

それでもホスピスへ移り、1日か2日して病院とは違う生活感を感じられるということを確認したときに、母は私と妻を前にしてこんなことを言いました:
「自分が自分でいられる間に二人に伝えておきたい。これまで自分のために色々としてくれ、支えてくれて本当に感謝している。ありがとう。」

良かれと思って過ごしてきたことひとつひとつが、母にはありがたくもあり、心苦しくもありだったのだろうなと確認した思いでその言葉を聞きました。

いくつになっても親は親、子どもは子どもなのですが、ある境目を越えたところから、子どもにとって親は守らなければならない - 守りたい - 存在になります。親も子どももどちらもそのことを意識していなくても、自然とそんな関係になるのです。

子どもが良かれと思ってやること - それが普段の買い物や食事のしたくや、風呂や庭の掃除、部屋のかたずけや模様替えであろうが、親は黙って受け入れるようになる。あれほどダメ出しのきつかった両親がそうやって、私たち子どもがやることを黙って受け入れるようになるのです。

その思いの裏側にある思いを知ることができるか、感じることができるか、それはひとえに人としてどれほど優しさを持てているかによって決まるように感じます。

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親だから、子だからということだけで、親子の間では自分の思いを互いに素直に、優しく伝え、受け止めることができないということが起こります。
互いに遠慮がないだけに優しさや思いやりをもう少し添えることができたなら、と思うような物言いになってしまい、伝えられない・受け止められないということをくり返すこともあるでしょう。

けれど、そのとき胸にある思いを正直に伝える勇気を持とう、思いやりを持とうと頑張らなければ、伝わらない・受け止められないままになってしまう思いもあるように思うのです。伝わらないのではなく、伝えない、受け止められないのではなく、受け止めない - それが結果です。誰のせいでもなく、そうしたすべてが自分から出たものです。

はたして、何をどんなふうに伝え、受け止めたいと思っているのか。本当はちゃんと分かっているその気持ちを実行する、実現できるのはやはり自分以外にないのです。
ある時を越えれば、子どもが親を守るのです。私はそう思っています。

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