“めまい” とその症状
“良性発作性頭位めまい症” という聞きなれない病名で診断結果を聞かされたのはもう5年以上も前の5月の終わり。もうかなり前のことですが、幸いなことにその後の同じ症状をくり返すことはなく体調は回復し、今日に至っています。
その日の朝、目を覚ますのと同時に症状がはじまりました。本当に突然のことでした。
目を覚ますとと言っても、目を開けるとではなく、目は閉じたまま覚醒したときにはじまったのです。目を開けようかと思いながら、仰向けだった体を左に向けようとし、閉じたままだった目を開けようかとしたときでした。
脳全体を激しく回されるような強烈なめまいを感じました。それまで、めまいというのは目を開けた状態で感じることが多く、思わずしゃがみ込むようにして体の動きを止め、めまいが治まるのを待つものだと思っていたのですが、なんだこの症状は!? という驚きが最初に来て、目を開けようとしたのですが、これもまた後で知った症状でしたが、強烈な眼振が起こったのです。
MEMO:
眼球が左右、あるいは上下に規則的に震える症状で、眼球振盪(がんきゅうしんとう)のことだというのは診察の際、医師の説明で分かりました。
症状のひとつは 眼振、もうひとつが吐き気
目を開けようとしましたが、左右両方の眼球が痙攣を起こしたように左右にふるえ、その間も脳全体を激しく回されるような強烈なめまいが連動していました。
どうすれば目の痙攣が止まるのか、脳を回転されているようなめまいが止まるのかと思いながら、ゆっくり体を仰向けに戻しさらに右に回したとき、次に来たのが強烈な吐き気でした。胃の上部と食道がつながるあたり、のどぼとけのすぐ下あたりに何かを突っ込まれているような違和感と一緒に、どうしようもない吐き気が襲ったのです。
あわてて体を仰向けに戻すと吐き気はすっと軽くなりました。いったい何が起こっているのだろう!? と思いながらもう一度、ゆっくり目を開けてみました。目を閉じたままの状態で感じていた眼振が止まっているように感じたからです。頭の中の “揺れ” はかなりおさまっていましたが、まだ大きくゆっくりと部屋全体が回転するような状態でした。
危険を感じ、立ち上がることはできそうにないと思いながら、ゆっくりリビングのソファへと移動し座ってみても部屋全体が回転するようなめまいは続いていました。
この症状が落ち着くにはまだしばらく時間がかかりそうだと感じた私は、ソファの上に右半身を下に横になろうとして再び強烈な吐き気に襲われました。あわてて体をもとに戻すと吐き気は静かになります。大丈夫かと思ってもう一度静かに頭を右へ下そうとすると胸に何かをつっこまれるような、危険な感じといっしょに吐き気がきます。
結局、ソファに体を立て、両ひざに肘をついたかっこうで肩と頭を支えるようにして頭の中の “揺れ” が静かになってくれるのを待つ以外ありませんでした。
メカニズムは分かっても原因が分からない?
そのあと、めまいがおさまってくれただろうかと思う状態になってから、恐る恐る用意をし、診断を受けるために病院へいったのですが・・・
何をどうするとめまいがくるのか、まったく予測ができない感じでしたし、めまいがきたとなれば生半可なめまいではなく、しゃがみ込むこともできずに倒れてしまいそうでしたから、ずっと妻に付き添ってもらうという状態でした。
血液検査のほか、いくつかの体の機能を診る検査をしてもらって出された診断が良性発作性頭位めまい症という聞いたことのない病名でした。
内耳にある三半規管が体のバランスを保つ役割を果たしているということは中学の頃、授業で教わりますが、その三半規管に耳石と呼ばれるカルシウムの粒が悪さをすると起こる症状だと説明してもらいました。
頭を強く打ったというようなこともなく、長時間の残業など、仕事で極度のストレスがかかっていたということもありませんでした。ただめまいの原因として考えられるのは新調しためがねでした。症状の出た朝の前々日、できあがった新しい眼鏡を、前日、数時間かけて過ごしていたのです。
ただ、確証はありませんでしたし、医師も「その可能性はある」という以外、断定することはむずかしいということでした。
ようするに、症状のメカニズムは分かっていてもその原因 - なぜ起こるのかはよく分かっていない症状だといいます。
良性発作性頭位めまい症は目覚めのときに強い症状になって発症することが多いとか。
その一方で、同じ姿勢を繰り返したり、静かに過ごしているうちに収まってくるとも説明されました。
めまいが出ているときはもちろん、次の瞬間に症状が出ては大変だと危険を感じるくらい、少なくとも私の経験は強烈なものでしたから、注意が必要だと思います。
医師にアドバイスされたのは
- たばこや睡眠不足などを含め、心身にストレスをかけないように気をつけること
- 同じ症状が再発する恐れはあると思って過ごすこと
- もし再発したとしても時間の経過とともに症状は落ち着くのであわてないこと
(あわてて体を動かすことでかえって危険を招く恐れがある)
ということでした。
そして、良性発作性頭位めまい症を改善する効果のある薬はないとか。
自分の体の不思議さをあらためて確認しながら、この先もうまく付き合っていけるといいがと感じた経験でした。