横びきの刃は木目を断ち切る刃
もう言うまでもないでしょう。両刃ののこぎりにある横びきと縦びきのの違い - それは木材の繊維の並ぶ方向に対してどうきるかによって決まります。

木材の木目の意味をご存知ですね? 木材の表面に模様を描いて通っている筋と筋の間隔は、1年に木が育った(太った)幅です。
木材のどちら側が木の幹の中心か分かりますか? 試しに、木材の小口を見てみてください。木目がどちらに湾曲しているでしょう? 湾曲の内側が木の中心です。中心から外に向かって木は太く育っていきますが、小口 - つまり幹を地面に水平に切った切り口にできる丸い輪の模様、年輪を幹の方向にたどると木目になります。
木目は幹が一旦成長を止め、表面を厚く硬くして冬に耐えたあとです。その1本の木目からその隣の木目までの間の色の薄い部分が1年に育った分というわけ。
そしてこの木目の部分はその間の成長した分より繊維が詰まって簡単には切ることができません。
木目の向き(図の青い線)を横切るように切るのが横びきですから、のこぎりの横びき用の刃は、その緻密な硬い繊維を断ち切れるよう、小さな小刀を並べた形をしているのです。

MEMO:
刃1つは3面で構成されている横びきの刃。その目立ては、その形をよく見て、どの部分が木を切っているのかが分かればヤスリをあてる位置が分かりますね。
ゼットソーなど衝撃焼付けののこぎりはヤスリはかけられませんからね! ご注意を。
硬い木目を断ち切る横びきの刃は鋭い小刀の形をしている - 気がついたでしょうか? 刃が鋭くなければ切れないのが横切りですが、鋭い分、刃も損傷しやすいのです。
ですから、力まかせの使い方はその意味でも避けなければなりません。
通常、のこ刃にはあさりが付けられていますが、このあさりは木屑を吐き出しやすくして刃がよりスムーズに木材を切り進めるようにつけられていますが、同時にまっすぐ直線に切れるのもこのあさりがあるからです。
MEMO:
のこ刃は目立ての際にあさりを付けるための振り出しという作業を行いますが、この振り出しの良し悪しで、のこぎりがまっすぐ切れるかどうかが決まります。
とても繊細でむずかしい作業なのですね。
そう確認してみると、刃1つで縦びき、横びきの両方に使えるゼットソーというのは便利だけれど、不思議な刃の構造をしているということが分かると思います。
その刃をよく見てみてください。刃の形は小刀の形をしていませんか?
のこ刃の構造、その意味が分かると使い方が分かる - つまり、のこぎりは思っているより繊細な道具だということ。この小さな刃のひとつひとつに上手に仕事をさせることができれば、切り口もくっきりまっすぐになるということを覚えておきましょう。
縦びきの刃は木目に沿って木の繊維をかき取る刃
木の繊維は木目の向き(図の青い線)に沿って並んでいます。その繊維のつながっている向きが木が立っているときの方向、つまり「縦」です。
横びきはその繊維のつながりを断ち切る小刀の刃。つまり、繊維がつながっている向きを横切るように断ち切ります。横びきのとき、のこ刃は木目に直角です。
その横びきの刃を縦びきに使うと…
木の繊維の向きと刃の向きが同じ方向になります。
木の繊維の特性
薪を割るときを思い出してください。
木を立ててなたやまさかりを使いますが、立てている木の方向は縦。木の繊維は同じ方向に力を加えられると裂けてしまうのです。
それに対して、ある程度の太さの丸太を折ろうとするときを思い出してください。
木の繊維の向き(縦)に比べ、折ろうとする「横」の力には木は耐久性がずっと高いのです。
縦びきの刃の特徴
つまり、刃の向きと木の繊維の向きが同じだと、崩れやすい木の繊維に刃が食い込んでまともに切り進めることができなくなってしまうのです。
だから、縦びきの刃は、木の繊維に対して直角に近い形に並んでいます。
木の繊維を断ち切るではなく、かき取るようにして切り崩す刃なのです。
ひく向きに直角に近い向きの刃で、横びき、つまり繊維を断ち切ることができないのは、もうおわかりでしょう? ゼットソーの刃の不思議も深まってきませんか?^^;