カモメのジョナサンはこんなデザインだった
著者 リチャード・バックによるこの作品は、もうクラッシックと言ってもよい作品だろうと思います。
1974年10月時点(映画が日本で公開された時点)で、米国では『風と共に去りぬ』を抜いて1500万部のベストセラーになった。全世界で4000万部が売れているベストセラー。
出典:Wikipedia
きっとみなさんもどこかで一度は読まれているかも知れませんね。
“Jonathan Livingston Seagull — a story”という題で初版として発行されたのは1970年といいますから、今から30年近くも前。私の書棚にあるその初版は、黒い表紙に白く、帆翔する鳥の姿 を染め抜いたようなデザインがとても印象的な本です。
物語のはじめ、飛ぶこととカモメという生命の意味に悩み、自分を探して空を彷徨うように飛んでいたジョナサンの姿が重なります。
五 木寛之氏の翻訳で新潮社から発行されたのが1974年。4年の時差が、そのころの世界の距離感が今では考えられないほど遠いものだったということを物語っているように思います。はがきや手紙であればアメリカやヨーロッパとの間を往復するのに1週間はかかっていたのですから。
日本語版の表紙は少し渋いグレーシルバー。飛んでいる鳥の姿も渋い群青色に染められ、朝焼けの空を飛ぶジョナサンの姿が重なります。
新しいジョナサン
なぜ今、カモメのジョナサンなのか。
それは - すでに読まれた方もたくさんおられるでしょう -版を重ねた初版にはなかったエピソード、40数年の間封印されていた物語が加えられて発行されたからです。2014年2月の発表ですから、すでに7年半以上の時間が経っています。初版と同じ五木寛之氏の翻訳で、新潮社による発行です。
“The complete edition (完成版)”と銘打って発売された新しいジョナサンの表紙のデザインでは、その鳥は白い姿はそのままに、青い空を飛んでいます。
ジョナサンが語りかけてくれるもの
カモメとして生まれながら、飛ぶということに魅せられたように生き、群れを作って暮らす仲間とのつながりを断ち切られても自分のあるがままを偽ることができなかったジョナサン。
光る翼を持った二羽のカモメに出会ってから、ジョナサンは、飛ぶということに縛られたカモメであることさえ超えてゆこうとするのです。
現実離れした展開に、ファンタジーの領域へと入っていくような物語は、宗教的な解釈を加えられたり、その意味を探そうと試みられたりしてきていますが、どの物語もそうであるように、その本当の意味は読者自身が決めるのだろうと思うのです。
どんな自分を求めればよいのか。今の自分はどこへ行こうとしているのか。
第4のエピソードにまだ出会っていなくても、まだ読んだことがなかったとしても、迷いが深いければ深いほど、きっとこの物語は胸に届く。私は、そう感じています。