自分たちの仕事に「情報サービス」というタイトルを付けて説明するようになったのは、いつの頃からだったろうかと思うことがあります。

自分たちの組織、仕事の仕方を見直そうとする活動の中で、自分たちの仕事も捉え直すことができるだろうか - できることなら、これまで意識していなかった新しいものが見えてくるといいのだが… と思いながら、悪戦苦闘を続けています。

 

古くて新しい? 情報サービスのひとつの形

情報サービス(じょうほうサービス)は、情報を扱うサービスで、情報そのもの[1]を(ないし、それに付加価値を乗せて[2])提供する「情報提供サービス」と、情報通信など(情報通信業)、情報そのものではなく、情報処理について(通信網やコンピュータなどのハードウェアや、コンピュータ・プログラムのようなソフトウェアを提供するのではなく)コンピュータなどを利用して情報を処理することそのもの(コンピューティングなどとも言う)を提供する「情報処理サービス」に大別される。

出典:Wikipedia・「情報サービス

そう記述されているWikipediaの説明を借りるなら、私が携わってきている翻訳という仕事は、「情報提供サービス」でもあり「情報処理サービス」でもあり、あるいはもしかするとそのどちらでもない!? というちょっと風変わりな仕事です。

マニュアルや技術文書、ソフトウェアやウェブサイトなど、テキストや画像で構成される情報があって、そのうちのテキストをもとの言語から別の言語に置き換える - ただそれだけの? 仕事をどうして私たちは「情報サービス」とタイトルを付けたいと考えたのか。

それは、言語というのは「ただ、置き換えるだけ」ではすまないむずかしさがある、とてもデリケートなものだと考えるからです。

 

ただ、そんな私たちの思いとは裏腹に、文字になった情報は「何が書いてあるのかだいたいの意味が分かればいい」という求められ方をすることも増えていると思います。私たちの中にあった文字ばなれもiPhoneやkindleから印刷物としての取扱説明書をなくす根拠になっていたかも知れませんね。

“置き換えるだけではすまないデリケートなもの” として扱おうとする人たちがいる一方、”だいたい分かればいい” というのが今のトレンドのようでもある? 私たち翻訳を扱う人間にとっても、ちょっと不可解な仕事、それが翻訳です。

 

“情報” というもののあり方が変わってきた - そう感じるようになって、その「情報サービス」というタイトルも見直さなくてはならないのだろうなと感じることもあるかと思えば、20年前に目指していたものが目標のまま変わらないでいるなどと言うことがあるのだろうかと思うほど本質は変わっていない - 翻訳にはそんなふうに、古くて新しい・新しいけれど古い面が同居しています。

「サービス業界が提供するサービスという製品は、数量化、あるいは定量化することがむずかしい。その数量化・定量化を果たせるかどうかに、業界、あるいはその企業の浮沈がかかっている」

そんなことを学んだり、考えたりしながら、自分たちの行くべき道を探してきたような気がするのですが、翻訳(産業翻訳)の世界ではずっと変わらず、その宿題を負い続けているような気がするのです。

少なくとも私がこの世界に入ってからずっとです。なぜでしょう?

少し時間をかけて分析してみると…
ある一定のインターバルをおいて翻訳を求める環境、翻訳する方法が変化してきている、そして何より、情報が言葉と画像(あるいは映像)でできるものだということが変わらずにきているということが分かります。多分そこに、翻訳が求められ続けている最大の要因があるのだろうと思うのです。

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別の記事で考えたことがあるように、マニュアルをパッケージに含めない、説明すること自体をやめてしまう、あるいはAIが成長した暁には… 翻訳どころか、言葉そのもの、伝えることそのものが劇的に変わっていても不思議はないのだろうだろうなという感触もあります。
ですから、今という時代はその過渡期と言えるのかも知れません。

  1. テキストと画像を時間と費用をかけてそろえ、印刷物にして製品に添えていた時代。
  2. テキストの印字はタイプライターやワードプロセッサーからPCとプリンターで行われるようになり、
  3. テキストを再利用できるようにすることが取扱説明書の品質を高めると考えられていた時代。
  4. 編集ソフトは高度化し、法対応を求められるようになったテキストは、マークアップランゲージなどファイル形式を必要とするようになる。
  5. ファイルを保存するという意識さえなくなりつつある現代、テキストは高速に作られ、使われるようになっている。

テキストや翻訳をめぐるこれまでの時代のトピックを5つ挙げてみると、トピックひとつあたり、4~5年とすれば20年から25年。環境や使い方の変化に合わせようとしてきた翻訳の歴史がそのまま見えるようです。

 

さて、私が所属する会社は、情報社会に新しい提言をするようになれるでしょうか。あるいは、時代の要請に合わせてテキストを加工し、ポストする速度に合わせるというプロセッサーとしての役割りを強めるのでしょうか? ちょっと楽しみでもあります。