自宅で車椅子

家の中での最初のバリア - 敷居

6畳の和室+8畳の洋室+12畳のダイニングというレイアウト。
父は6畳の和室にベッドを入れて、その部屋に。症状がまだそれほど深刻でない頃には、食事のときには洋室を通ってダイニングへの移動も問題なくできていました。

リウマチの病状が進んだということもあったと思いますが、加齢による筋力の低下の方が進んでしまっていたのではないかと思います。部屋の中でも杖がほしいほど足腰の衰えが見えるようになると、それまで意識することのなかったものが邪魔になるようになったのです。
それが敷居でした。

高さ 1 cm に満たないバリアを超える力

実家は初期の2×4(ツーバイフォー)の工法で作られた家でした。実家の建設当時は壁+床+天井で作る四角形を基本にした耐震性と気密性を売りにしていた工法で、部屋と部屋は基本的に壁で仕切られ、すきま風が入らない、断熱性も高いと言われていました。ただ、スペースを有効に使えるようにということで引き戸が多く使われていたデザインで、その引き戸の足元には当然ながら敷居がある構造。

敷居は床よりもほんのわずかに高くなっています。その0.5 cmを超えるか超えないかというわずかな段差を意識し、注意しないと父のつま先がひっかかるのです。
敷居がバリアになるという予想もしなかった事態がいささかショックでした。

学生時代、体育会系のクラブ活動に浸っていた私にはなかなか理解できませんでしたが、体の痛みに負けてしまっていたからか、80あるいは85歳を超える高齢ゆえに意欲が削がれる、いわば認知症のような精神的なところに問題があったからか、体をかばって動くことを拒絶することが増えた父は、その敷居というわずかなバリアを越えにくいほど衰えていたのです。

高齢と体力の衰えがそんなふうに結びつくというのも想像できないことでした。思えば、敷居だけでなく硬くなっていく父の心も、もうひとつのバリアになっていたかも知れません

父は要介護度3の介護認定を受けたのですが、最晩年、認定審査を受けないまでもその介護度が上がっていたのは間違いないだろうと思います。

介護保険とバリアフリーのための改築(リフォーム)

そこまで体力の衰えがひどくなる前、両親は介護保険の助けを得て、

  • 浴室の入り口のドアを2分割型の、軽く、小さなスペースで開け閉めできるものに付け替え
  • 父がいた和室と洗面所、トイレ、浴室をつなぐ通路、そしてバスタブの周りにいくつかの手すりをつけ
  • 玄関を出てすぐの階段を家の前の道路までのスロープに、さらに
  • 一番高かった敷居(和室と洋室の境にある敷居は高さが 2 cm 近くありました)に小さなスロープを付けてもらいました

傾斜地に立つ実家母屋でしたから玄関からのスロープは5m(畳3枚を縦につないだ)ほどの長さでした。

全額を介護保険でというわけにはいきませんでしたから貯金の一部を使っての工事でしたが、総額で40万円ほどの見積もり額だったようです。

MEMO:
介護に必要な住宅のリフォームは20万円を支給限度基準額として補助してもらうことができます。
20万円を一度で使い切れなかった場合、次に再リフォームが必要になったときに残りの金額を申請できます。
さらに要介護度が3以上上がってしまったり、転居したりと条件が変化したときも含め、まずケアマネージャーに相談してみてください。

敷居を越えられなかった車椅子

私たち子どもと同居することなく、「老々介護だね」と言いながら実家で自分たちの暮らしを続けたがり、同じような介護生活を送られた方の好意で車椅子を譲ってもらった両親でしたが、洋室とダイニングの間にある敷居を父を乗せた車椅子で越えることはむずかしかったのです。

自転車と同じで、車が転がりやすくするのであれば、タイヤのチューブに十分空気を満たせばよいのです。

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しかし、空気がたっぷりのタイヤは固くなりますから、障害物の反動をまともに受けてしまいます。押している母は苦労し気を使い、乗っている父は怖さを感じるということになる。チューブの空気を少しゆるめにすれば、衝撃はやわらぐけれど、転がりが重くなってしまうというわけです。

 

体を起こし、痛みとうまく付き合いながら、せめて食事の時にベッドからダイニングのテーブルまで来る気持ちや元気を保ってもらえたら…

そんな母の思いをかなえるには、敷居というものの存在に目を向ける必要があったように感じるのです。