紙はりかんな(紙貼鉋)という道具

今も近くにある障子や襖(ふすま)

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私は小学校の低学年から高校、大学と、東京の目黒で暮らしました。その時の住まいは鉄筋モルタル造りのアパートで、押入れと部屋の仕切りはすべて襖でした。
その後、父親が建てた家は2×4(ツーバイフォー)工法で建てられたもので、障子や襖がありませんでした。

今の私の住まいはマンションですが、3LDKの一角に障子と襖(ふすま)があります。新築で購入した今のマンションに移り住んだとき、一度離れた障子と襖にまた再会したなと感じたのを覚えています。

その昔 - 小学生、中学生のころだったと思うのですが - 12月の暮れ、大晦日を迎えるための大掃除は、箪笥(たんす)などの大物家具を家の間に運び出し、障子、襖、それに家中の畳(たたみ)を運び出して行うのが一般的でした。障子紙、襖紙を張り替え、場合によっては畳表(たたみおもて)を張り替える1日がかりで行う文字通りの大仕事でした。

MEMO:
障子紙、襖紙の張り替えは自分たちでやっても、さすがに畳表の張り替えはプロの畳職人の方でした。

one of paper sliding-doors in Japan
わが家の障子

今のマンション住まいとなってからも、その昔、大人に教わりながら取り組んだ大掃除の習慣を思い出し、障子紙の張り替えをしたのですが、方法や手順を忘れないでいる自分にちょっと驚いたりしたものです^^

ただ、今のマンションでの暮らしをはじめるときに ん? と思ったのが障子の形。私が知っている障子とは紙の貼り方 - 正確には、障子の枠の形 - に微妙な違いがあったのです。

わが家の障子の枠はフラットに組まれていて、大判の障子紙を平らに敷くようにして貼ることができる構造ですが、私が知っていた障子の枠は、外枠の障子紙がのる部分が1, 1.5mmほど低くするわずかなステップがついていたのです。

障子紙の張り替えの経験をしたことがある人にはイメージしてもらえるかと思いますが、貼った障子紙はどこかをいずれかの方向にカットしなくてはなりません。その時、外枠につけられているステップが貼った紙をカットする際の定規の役割りを果たしてくれます。障子を裏から見ても見ても紙のエッジ(端)を直線ですっきりと美しくみせたいという意識があったから、そんな構造になっていたのではないかと思います。

その昔の職人の仕事、技術が道具に見える - 紙はりかんな

そういう、昔の、日本らしいこだわりを形にするために使われていたのが紙貼鉋(紙はりかんな)だと言います。

tool from showa-period
昭和の時代の道具 - かみはりかんな

かんなと言うと、普通は木材の表面を平らに、均一に仕上げるための道具というイメージがありますが、障子や襖の溝を掘るためのものや、組んだ木材が作るL字型の隅を削るものなど、かんなは色々な種類のものがあったんだということが分かります。

紙はりかんなを裏から見た本体の右端、刃の右端より少し左寄りの位置にわずかにへこみがある(かんな反対の左寄りが高くなっている)のが分かるかと思います。普通のかんなのように使っても、(裏から見た)左側が余計に削れる形なのです。

tool from showa-period

ちょうな(「釿」または「手斧」)と呼ばれる道具をご存知の方もいるでしょう。私などは、これはのみの一種かな? かんなの一種かな? それともなた(鉈)だろうか?? なんて悩んだりしたことがありますが、いずれにしても「仕上げる」というイメージより「形を作る、削りだす」道具というイメージの紙はりかんなはちょっと独特の道具だったのだなと思うのです。

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私が持っている紙はりかんなは昭和の時代のものです。探しても、平成生まれの紙はりかんなに出会うことができないということは、障子の形が変化したり、障子がない家もあり、という時代になって、道具として必要とされることがなくなっているのだろうなと思います。

必要ならトリマーを使えば、簡単迅速に手作業のかんなよりはるかにきれいなステップを削りだすことができる時代ですから。

日本の住宅から障子や襖、畳がなくなるという日が来るだろうか - たかが障子? 、あるいは、手元にあるこのかんなを見ながら、そんなことを感じることがあります。

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