世代を繋ぐ知恵 『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』

『素直な心で衆知を集め
自修自得で事の本質を究め
日に新たな生成発展の
道を求めよう』

という松下政経塾の塾訓を扉に、

「素直な心になりましょう。素直な心はあなたを強く正しく聡明にします」と、こういうことを言うてるわけですわ。

という言葉ではじまる著書リーダーになる人に知っておいてほしいことは、松下幸之助氏が語った話しを松下政経塾が編纂したものですが、ISOのマネジメントシステムのように、確認、規定、文書化され、マニュアル化されたもので囲まれてきた時間が長い私には、ある種新鮮な驚きを与えてくれるものでした。

リーダーとして知っておくべきことのひとつひとつを読み進めるほどに、それ以前に大事なものがあるということを感じさせてくれる著書だと思っています。

How to 以前に忘れてはならないもの

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私が社会人として会社で働くようになる10年近く前に、松下氏は会長職を退かれ、現役を引退されていた計算になりますが、松下氏とその言葉に触れておられた塾生の方々の間にあったであろうと思われる関係、環境が、私が所属してきた会社にあっただろうかという感が強く残りました。

松下氏が語っているものは、松下氏自身が経営の経験の中で実践し、確かめ、練り直し、さらに実践し、ということを繰り返してこられたものを背景としたものなのではないかと感じます。現役であった松下氏にとっては信念であったろうし、現役を退かれてから語られ、伝えられたものであるとすれば、理念とも呼べるもの - そこから教えられるのは、言葉の内容以前に「リードし、伝えようとする者」のあり方と「受け止め、それに続こうとする者」のあり方だと思うのです。

私が所属していた会社にあっただろうかと首をかしげたくなったのは、そうした縦の人間関係と、それを支える横の人間関係のような気がしたのです。

私たちの世代は、標準化の名のもとに、分担や責任などを含めて整理と共有化を進めたものが会社組織だと捉え、あるいはそうした性質の会社組織を標榜する傾向があるような気がしています。ところが、松下氏の時代の会社組織においても、そうした整理や共有化、標準化が行われていなかったわけではなかったのではないように感じます。私たちが口にする「システム」という概念がなかったとしても。

たとえば ISOの品質マネジメントシステムも、経営者の責任の明確化や表明、共有という手順を求める条項を持っていますが、松下氏の言葉、話しの内容には、私たちがシステムの「要求事項」などとして必要性を認知しているものが網羅されている - そう感じるのです。松下氏の言葉の中には

主観に頼ったままでは物の見方が偏り、誤りを犯しやすい。それゆえ、素直な心で客観的にとらえることが大切だ。時間がかかることだが大切なこと だ、といった意味のことが語るくだりがあります。

こうした言葉が示しているのは、松下氏自身が大事なことは時間をかけても伝えようと考えられていたということ、そして、それゆえに時間をかけてでも耳を 傾け、体現することをあきらめないでほしいと伝えようとされていたということ、ではないかと思うのですが、どうでしょう?

私たちが馴染んだマネジメントシステムは、「何を」「いつ」「誰が」「どのように」行うかを自ら定め、実行しなさいと求めますが、松下氏の言葉はこの例で言うのであれば、そのひとつひとつに具体的な指針を示すもの、つまり、品質マネジメントシステムが定める「力 量、認識および教育訓練」をいかに進めればよいか、取り組めばよいかのひとつのヒントとして受け止めることはできないだろうか、そう感じるのです。

さらに言えば、マネジメントシステムは、こうした松下氏のような経営者の教えから作られたものに違いないという感覚さえ持たせるものです。

見方を変えてみると、もしかしたら私たちは安直に答えを求めすぎてはいないか、その反省に立つことも思い出させてくれる言葉たち、というとらえ方もできるかも知れません。How to の前に大事なものは、「リードし、伝えようとする者」のあり方と「受け止め、それに続こうとする者」のあり方 - お互い、会社の一員として目指すものが同じだとしても、相互理解がないところに力は生まれない、そのことを思い出せと語っていると私には思えます。

 

自分の精神的な立ち位置を再確認させてくれるヒント

この著書にふれて、ここにつづられている松下氏の言葉はどんな機会に、誰に向かって語られたものだろうか、ということも感じました。なぜそんな感想を持ったのか。それは私自身、社会人して働き始めてから、会社の中や友人たちとの付き合いの中で、部下と上司、あるいは先輩と後輩といった人間関係が変わってきたと感じる時期があったからです。

語る者とその言葉を受け止める者の関係が変わっているとしたら、現代の私たちははたして、松下氏の言葉ひとつひとつを、松下氏が伝えようと考えられたイメージどおりに受け止めることができているだろうか - そう感じたのです。

まして、私が感じていた人間関係の変化は、私たちや私たちよりさらに若い年代の人たちが自ら変えようとしていると感じていたのでなおさらです。

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松下氏の言葉に、松下氏の時代は One for All, All for One の時代だったのだな、と感じたのですが、私たちの世代はそうしたそれまでの関係を、「組織(会社) vs. 個人」という感覚で変えようとしていた、そんな感があります。会社の行事になぜ、社員全員が参加しなければならないのか - それはひとつの例にすぎませんが、そんな言動、ふるまいに現れていた個人主義とも言える風潮が私たちの世代にはあった。

私たちはその中で、自らが標榜する組織を見失ってきたのではないか、そのことに思いを馳せ、立ちかえることの意味を語りかけてくれる著書だと思うのです。

みなさんは何を感じられるでしょうか。

 

 

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