どんな言葉を知っている? - それを聞くと年が分かってしまう??

“今の言葉” vs. “むかしの言葉”

スポンサードリンク

物心ついたころから、たくさんの言葉を覚えたい… と思うようになって、本もずいぶんたくさん読んできたように感じていましたが、「緊褌一番!」 という言葉は知りませんでした^^;

まだ知らない言葉がある! 知らないものがある! というのは、覚えられることがまだある! まだ知る歓びが残っている! ということでもありますね。

脳科学者の中野信子さんが教えてくれたように、記憶とか学習という脳の機能をこれからも伸ばしていけるといいんだけれど… と思いながら、言葉の寿命のようなものを感じてちょっと切なくなっています。

ところでこの本のオビにはこういうリードが書かれている。
「緊褌(きんこん)一番!
と叫んだところで、もはや褌は遠く去った…」
これは編集部が考えた文章だが、それを読んだ知人の女性から電話がかかってきた。
「お恥ずかしいんですけど、あの、緊褌一番という言葉はどういう意味なんでしょうか。息子に訊きましたらね、気を引き締めるというようなところだろ、というんですけど、それでよろしいんでしょうか?」
「はあ、まあ… そういうことですけど」

私は一応同意したが、どうも釈然としない。「緊褌」という言葉には、男子としてのるか反るか、生きるか死ぬか、ここ一番、と奮い立って戦いに挑む時の、勇気と決意が籠っている。
褌をギュッと引き締めれば、その褌の中にダラリと下がっているかのモノ --- 男の象徴たるかのモノが締めつけられ、男意識が奮い立つ。
「よしッ! やるぞ-ッ! 負けぬぞ!」
と眥(まなじり)決した時の気持ちをいうのである。

(中略)

と、ここまで書いてハッと気がついた。今私は「眥決して」とつい書いてしまったが、この言葉だって、わかる人にはわかるだろうが、わからない人には、佐藤愛子という作家はむやみに難しい言葉を書いて、自分をえらそうに見せようとしているやうだと思われるだろう。

出典:佐藤愛子さん著・「老兵の進軍ラッパ (文春文庫)

たしかに、この話しに出てくるような30代の人が 褌(ふんどし)を知らないとしても少しも不思議はないだろうなと思います。

かく言う私も、幼い頃、祖父が褌ひとつになって乾布摩擦をしていた姿とか、物干し竿にかかった洗い立ての白い褌が風になびいている様子を覚えているくらい^^

ひらひらしている白い布が不思議で「あれ、なに?」 と指さして聞いたことを覚えていますが、自分で褌をしめたことはありません。

その頃には褌を身につける機会と言えば… 祭りのときくらいだったでしょうか? それ以外思い出せません。
川で水遊びをするときも、もちろん学校の体育で水泳をするにしても、使うのは今で言うスイムパンツでしたし。

ただなぜか、男はここ一番というときに褌をギュッと引き締めて… という言葉のニュアンスは知っているし、何となくわかるのです。

私の父親の世代は「パンツ」ではなく、褌の青春時代を過ごした人たちだったからでしょうね。

ためしに Amazon で褌を検索してみると…^^ ちゃんとありますね!
男にとっての ここ一番! の必要がまだ残っているということでしょうか?^^

“緊褌” と “垂涎” - どちらがむずかしい?

言葉がなくなるということは

佐藤さんは「緊褌(きんこん)一番!」という言葉が伝わらなくなっていたと語り、同じように、「眥決して」という言葉も多分もう伝わらないのだろうという意味合いのことを語っていますが、そういう言葉は “枚挙に暇が無い” がないのでしょうね。

褌とは違いますが、私もつい最近、翻訳の現場で似たような経験をしました。

「みんなの憧れである」とか「みんながほしがる」、それも「渇望する」「熱望する」というくらい興味を引く、憧れのもとだ - そんなイメージを一言で表せる言葉ってあるだろうか? という話しになったものですから、「言葉が古いけど、イメージとしては “垂涎の的” だね?」 と言ったのです。

これが誰にも通じなかった!^^; 「読めない漢字はダメでしょ!」 という意見さえ出る始末。

褌のように目に見え、手に触れるものでさえ忘れられてきているのですから、”垂涎” (すいぜん または すいえん)のような抽象的なイメージに近いようなものは知らない人がいても、やはり不思議はないのかも知れません。

スポンサードリンク

褌が生活の必需品ではなくなり、”褌を締める” という習慣も稀なものになる - それは、褌にまつわる風景や時間、イメージや行動など、褌という文化すべてが私たちの身近ではなくなるということ。

そう考えると何だか淋しくなりますね。
佐藤愛子さんではありませんが、あれがなくなった・これももうない と数えはじめると本当に切りがない気がします。

なくなるものがあるのと同じように、新しく使うようになった言葉・新しく身近になった文化ってどれくらい数えられます?!^^

スポンサードリンク

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。